を叩いたことがあった’ 右手の衝撃が引く前に、女の金色の爪から紙の箱とその一本が飛ぶ  サイケな夜の町をその頃はみんな、うすら汚ない黒い
制服を身に纏い、二本足で覚束なく道を舐め回し歩いた。原色の光が夜と
ぐっちゃぐちゃになって、これでもかというくらい脳内を覚醒させる。その光は
平気で黒い制服たちをバグらせた。知らない人間を困らして、クソ程の理由もなくただ怒鳴られる、それに怒鳴りかえしたいだけだから、うまくいくと笑った。だからこの原色の町では、誰もがフツーにおかしくなった。明日なんかも全然
知れなかった。

どこを叩いたんだかは忘れた。公園のブランコ、柵の近く。女が砂利に手を
着いた。落ちた箱と火のつき掛かった一本を靴底の裏で踏みつける。
女が喚いた。


「なにすんの」

「こっちのセリフや」

「たばこくらい、みんなやってるよ」


女の発言にただ呆れて、靴底の裏であふれる葉のクズを蹴りつけた。


「くだらん」

「武士こそびびってんのとちゃうの」

「なんでわいがびびんねん」

「肺黒くなるから」

「アホ」


一瞬間に、つまらん女だと思った。しょうがないバカ女だと思った。ずっと前から思っていた。こういう馬鹿は、みんな自分を羨んで集まった。なにが‘みんな、や。と、無意識に笑いがこぼれた。みんなでおんなじことしてそんなに楽しいかナカヨシゴッコが。主体性のない「待ち女」はうんざり、なんていう理由も言わず、吐き捨てた「消えろ」。 一発では利かなかった、 「消えろ!」
女が走った。





“●●スクリプトからの脱出”  町で見掛けたヘッドライン、人生の糸引く
見えないマシンが現代に生きる人間をパターン化する、、、んだと。自分には本能でそのマシンがよく見えた。それをブッ壊す、強さとデカさが欲しかった。もっ、 と鋭く。制服はとっくに脱いだのに、強さの意味は未だに分からなくて、たまに苛ついてあの公園の横を走る。社会の波に殉(準)ずるなんてのが無理なことくらい、そんなの よく解ってた。





「お前はそのまんまでええんや」 そんな類いの台詞を、背中越しに聞いて
なんにも言わずに飛び出したのに、頭冷やして戻って来ても、ジムには相変わらず柔らかな明かりがともっていた。 ちゃんと寝られる場所を見つけたと思ったのが本当なら、明日も自分はここにくる。そう思った。 自分の内の強さは、誰にも知れなくて良い。誰も知らなくたって意味のあるものが欲しい。

それから守ることを勉強してちゃんと笑うことを知る。 願わくば今どこで何してるんだかも知らないあの女が、まっとうに稼いだ金で買ったテレビで、自分の
活躍を観てるとか。そうやって少しずつ明日を知れば良い。少しずつあの色も光も、ただの記憶になってけば良い。





国へ行く友達を見送って、バイクで事故した友達の世話焼いた。 スクリプト払拭できたのか知らないけれど、スクリプトに生きる人は人で、みんな自分の全然知らないところで、効きすぎの冷房地獄と戦っているのだ。





く波打つ海岸。上の方に沢村だけ残して、自分は打ち際まで降りた。靴を沢村へ放り投げて「管理ヨロシク」と手を上げた。飛んで来た靴をその場に座りながら避けて、沢村は言った。 「お前、そんなことして楽しい?」


「なにが、」

「貝殻なんか拾って、 きも」

「別にわいが欲しくて拾ってんのとちゃうわ」

「そんなの分かってるよ」


呆れて言った沢村は、手もとに置かれたボクシング雑誌を持ち上げる。
風で揺れる表紙をこっちへ見せて、にやつきながらまた言った。


「ヴォルグ・ザンギエフ大絶賛活躍中」

「やかましい!」


全然届くわけないのに沢村の方へ砂を蹴った。かがげた雑誌を下ろして、
「それ、貝殻、 とっといてどうするんだよ」


行く?アメリカ

「行かへん」


沢村の溜め息が聞こえた。意地っ張り、と呟かれたが無視した。
反応したら負けだと思った。


「またニッポン来たときに、渡す」

「来なかったら?」

「そんときはそんときや」


ふーん、 沢村は視線を雑誌に落とす。良い顔じゃん、呟かれたのを背中で
聞いた気がした。「お前にやろうか、貝殻」


「いる訳ねえだろそんなもん」

それよりこっちは腹減ったんだよ早く飯食い行こうぜ

「おごりか!」


勢い良く振り返ると、自分の靴が飛んできた。諸にこめかみに当たって砂浜に落ちる。その拍子にしゃがんで、もう一発は当たらずに砂へ埋まった。


「バーカ」


その笑い方は自分が教えたやつだった。






























                        














To be continued









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