「砂糖?」
「そう」
洋菓子屋にて.
ガラス玉のような、瓶詰めの飴玉を覗く。ヴォルグの青い目に派手な色が映った。聞き返した千堂に、返事をする。
「紅茶に入れると甘くなるでしょ、
だから僕、砂糖は魔法の粉だと思ってた 小さい頃、
ピーターパンの、」
「うん」
「知ってる?千堂 ピーターパン」
「知っとるよ」
千堂も瓶を覗いて「これ身体に悪そうやのー」と呟いた。
「ピーターパンに妖精出てくる、妖精の粉で空飛べるようになるよね
僕の実家のキッチンの、棚の右から二番目、瓶に入ってる
サトウが」
いちご・フランボワーズ・ブラックベリーのタルト、千堂は首を傾けて眺める。
ヴォルグが「これ買うの?」聞くと、「ン、においだけ」と千堂は唇をとがらせた。
「それでサトウを、妖精の粉だと思って。
僕、僕の頭にサトウをかけて、」
千堂はちゃっかり瓶詰めキャンディーを手に入れた。財布をジーパンのポケットにしまう。
指先で瓶の蓋を掴むとそのままヴォルグの頭にごち、とぶつけた。
「それで、どないなった」
店の外へ出た。くせ毛の茶色とブラウンシュガーの髪が並ぶ。
「空飛べるようにならなかった」
ま、そらそうやな 千堂は瓶の蓋を開ける。甘いにおいが周辺を泳いだ。
キャンディーを自分とヴォルグの口に放り込み、頭を掻く。 “でも、
「実はわいもそれやったことあるわ」
口の中に偽物のメロン味が踊る。
恥ずかしそうにあさって向いた彼を、ヴォルグは今でもよく覚えている。
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