lip creamer















重くて、くるしい、熱い。目を開けた。一番始めに見えたのは、自分の部屋のではない、が いつもの蛍光灯だった。一度咳をして 「・・・おりろや、 沢村」 眠い、いたくて 口が、痛い。 「おい・・・聞いとんのか」

「・・・、、うるせえなあ、」

自分より少しだけ図体のでかいのが上からどいて、千堂はやっとまともな酸素を手に入れた。

「そんでまたちゃっかり自分だけパンツとズボン履きよってな」「寒いから。悪いかよ」「別に。せやけど、もっと労れ」

小言もそこそこに起き上がる。時間が知りたくて、ふいにいつものクセでDVDデッキに目をやると、電源ランプが点灯している。やってる間にリモコン踏んだかな、と考えて「今何時や」その疑問の無意味さに気が付く。

「労るってどうやって?」

「先に時間教えてくれ」

これだけ居てまだ自分とややズレる、沢村は 布団の島を離れて、いつものカバンを漁り出した。「2時、にじゅうななふん」一度携帯電話に映る時刻を読み上げ、閉じると後ろへ放り投げた。携帯電話以外に手に持った小さく細長い何かを握って戻り、容赦なくベッドに乗る。ドスンと伸ばした両足に座られた千堂の悲鳴が部屋をつんざくと、沢村は涼しげに耳を塞いだ。

「、!おんまえ、死ぬ、、わいの、わいの足!」「ん」「足!あしあし!乗っとる!」「あ、悪い」「、、死ねアホ」

どこふく風沢村は手の中にあったリップクリームのキャップをはずすと、底を回す。両膝と片手をベッドに着いて、千堂の前に無機質の黒い目が迫る。

「・・・なんやねん、」「いー」「ア?」「しろよ、イーって」「お前ソレ、塗る気やな」「それくらいお前も分かるだろ」「嫌や、わいリップクリームの類い大嫌いや。味するし、唇になんか付いてんの嫌やねん」「ガキじゃねえだろ」「ガキやない。が、嫌や」「ふん」「・・・元はと言えばお前が無駄にべろべろやるから口切れたんやろが」「そりゃあんだけ唇乾燥させてりゃ切れるだろ」「なんやとゴラ」「ちょっとだまれよ」

黙れ。沢村は二度目の制止に口を口で塞ぐ。千堂の薄い下唇に覗く赤い血肉を舌で圧すと、主はギャアアと叫んで右手を振り上げた。零距離も虚しく、千堂の腕は空を斬る。その手はそのまま口を押さえた。

「いでーー」

「バーカ」

「きさまころす」

だから塗ってやるって言ってんのに。 変わらずにやにや笑いを止めない沢村に、「いらんボケ」と答えそっぽ向く。ヒリ、と痛む唇にしばらくすると千堂はめげて、沢村に向き直った。「自分で塗るとかつまんねえこと言うなよ」と呟かれた後、(不服・雪辱を忘れる極僅かな一瞬に任せて)千堂は無言で目を閉じた。
































                        







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