三匹のうそつき












 どこへ行ってもたばこが手に入らず、店員の「当店には置いてません」の一点張りも聞き飽きた。 ヤニ切れの苛つきを最小限に押さえつけ、バイクのエンジンをふかす。酷い音で路を走り、すこしは気が晴れたと思った。それから後の話は、目が人工的に自分の諸行を記録していたもの以外ではない。

 知っている顔を見付けた、と思った。無意識に目で追った そこまでは良かった、数秒後に隣を歩く外人に気が付いた。自分の知っている顔の人間(千堂武士)の、あんな顔は見たことがなかった。恥ずかしいのを堪えてるのか嬉しいのか良く分からない、分析できない、表情だ。きめえ、きめえきめえきめえきめえ気持ち悪い、単純に気持ちが悪いと思った。すげえ気持ちが悪くて、それをまずどうにかしたいと思った。バイクを路に乗り捨てた。外人のことは忘れた。千堂の肩に手を掛けた。次の瞬間、とがった目がすぐに反応してこちらを向いたが、俺は負けなかった。千堂より早く早くふりかぶって、顔を殴り飛ばした。
 モロに、受け身無しの身体は後ろにひっくり返った。隣の外人が驚くより速く人でも殺しそうな表情で日本語じゃない言葉を捲し立ててきた。意味が分からないから特にどうとも感じなかったが、とりあえずこの外人は外人の頭の中の思い付く限りの酷い言葉で、何事か罵っているんだろうと思った。どうでも良かった。 すぐに起き上がって来た千堂にもう一発入れてやろうとしゃがんだが、外人が間に入って邪魔してきたから、外人をまずどうにかしてやろうと立ち上がりながら拳をつくった。その時千堂が外人の後ろから「待て」と怒鳴って外人を後ろに引っ張った。直ぐ様外人は千堂の横にしゃがんで「大丈夫、大丈夫、大丈夫?」と千堂の顔を撫でた。案外大丈夫そうで鼻血ひとつ出してなかった。背中から頭に掛けて勢いの増したベクトルが貫いた。やっぱりもう一発殴ろうと思った。

「大丈夫や、お前とりあえず帰れ」「どうして帰らないよ警察呼ぼう」「大丈夫や」「この人危ない、」「ちょっと話す」「どうしてそんな必要ない」「話す」「やめて」「どけや」「どかない」「ころす」「・・・わかった、明日会える?」「おう」

 一通りもめて千堂は立ち上がった。今気が付いたが辺りは大騒ぎになっていた。外人はそのまま振り返らず進行方向に歩いて行く。千堂は俺の腕を引っ張って走り路地の裏へ引き込んだ。人気がなくなるまで走るに走り、やがて息が切れてきたのでその旨を告げると公園のフェンス裏で止まった。 千堂はその場に座り込んで地面を見ていた。俺は立っていた。

「てめえ嘘つきだな」「せや」「てめえ嘘つかねえやつだと思ってたよ」「せやな」「だいたいさ、つりあってねえよ、あんな外人、お前ブスだし、ブス、ブスブスブスブス」「その通りや」「ナメてんのか」「ナメてへん」「じゃあなんだよ」「悪いと思ってる」「嘘だよそれ」「嘘やない」「嘘だよ」「嘘やない」「まじかよ」「ワイお前のこと好きや」「嘘だよそれ」「ほんまや」「嘘だ」「ほんまや」「じゃあさ、」


「お前今ここで俺におかされろよ、そしたら全部チャラにしてやるよ、外人ともずっと付き合ってたら良いよ、俺と外人どっちも必要なんだろ?お前にはさ」




























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