「風の強い日は外出たくねえんだよ。黄砂飛ぶだろ」
何をひ弱な事を…と苦笑いしながら、千堂は買って来た飲み物(リッターの
コーラとサイダー)と菓子類(適当に選んだのでよく覚えていない)の入った袋を、座った沢村の後頭部にぶつけた。
ぱんぱんに膨れっ面のレジ袋を受け取り、 コーラいらねえ、と取り出して足元に転がす。それを見た千堂はついに口を挟んだ 「あのなあ、 アレルギーはしゃあないやろ」
せっかく黙ってゆうこと聞いてぱしられてやったんや、機嫌なおせ
「やだね」
御手上げだ、と千堂は思った。普段から腹の立つことしか言わない嫌なやつだが、理屈とか嫌味とかそういうのは去ることながら、本日は駄々まで捏ねる。輪をかけて質の悪くなった友人に呆れたために、瞼がずるりと落ちてきた。
ふと視線を横のテーブルに移す。
いよいよもって説教まがいの小言を言わざるを得なくなった。
「お前、薬飲んだんか」
「飲んでない」
テーブルの上に置き去りの薬は、紙袋すら開けられた形跡がない。
千堂の不快指数は急上昇していく。
「具合悪いのは当たり前やろ、なんで飲まへんの」
「飲みたくない」
「どあほ」ガキじゃあるまいし。
「お前知らねえだろ」
「なにが」
ここにきて千堂はやっと座った。
風は窓を叩きまくり打ち付けて、隙間から唸る。
千堂は胡座に頬杖、未だに目を半分にしながら沢村の言葉を待った。
「ベランダの冊が、黄砂で黄色くなるんだぜ」
千堂は二三度瞬きした。
沢村の足元に転がるコーラのペットボトルを拾った 快音と共に蓋を開ける
飲んだ。
「あ 、そう」
「お前、自分で布団干したことねえだろ」
「ないなあ」
じゃあ分かんないだろうね、人類滅亡の危機だ。大真面目に語る沢村氏に、千堂はふきだすと 沢村の握った拳がすっとんで来た ぼこん 、殴られた。
「お前…、 なんのためにワイ呼んだ」
「八つ当たりに決まってんだろ」
折角の休み返上、暴風の中、ケチで有名な、千堂武士が、
わざわざ大阪から、名古屋まで。
沢村が聞いたのは、堪忍袋の緒が焼き切れる音(ちょっと焦げ臭い)。と、
恐竜が歩いたかのような地響き、窓が勢い良く開く。
「くしゃみ死ね!!」
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