海渡り届いたエアメール、その一通を開かず部屋に投げて、千堂は靴を履いた。
玄関の扉を開けると、途端にひやりと秋のにおいが耳の横を通った。首を傾けて右肩を回すと、少しだけすくんだ足を叱咤して地面を蹴った。
街の活気が嫌に嘘くさいと思う、気分だった。道の端に溜まってきた枯葉、意地になって鳴くセミ、あんなのが届くといやでも、おもい知らされるやつも自分を忘れてはいないこと。辛気臭くてたまらない、全てぜんぶ知らされるような、あほらしく、頭のむだづかいした手紙。
だから中身はどうせ、自分には免疫のない、カユくて寒い文に、どっか語と日本語の入り混じった意味不明な文字の羅列、そして恐ろしく笑えない。この天気にあいつの書いてくる手紙はきっと寒すぎる。千堂は走った。
手紙を頭から消そうとして、違うことを考えた。かわいい近所の猫、今度がき共に買ってやる新しいゲーム、次の試合、エロ本、友達と食べに行こうと約束した店、ねらってるジーパン、秋が近づく高い空、息を吸うこと、息を吐くこと、はしること
*
砂を大量に飲み込んだ。反射で地面を掴んだら、ただの布団だった。両目は一度天井をうつす、次に波打つカーテン。寒さと風に喉が大分やられていて、今の夢もそのせいだと思った。油断した体調管理も含めてメンタルに痛手を喰らう。目をこすった。
暁が開いたままの窓から入り込む。日で水色にあたった床に放られたままの手紙を、一度無視した。窓を閉めるため起き上がって、手紙を跨ぐ。窓を閉める。手紙を跨いで、布団に戻る。しばらく布団の中で呼吸して、横向きに顔半分だけ出す。手紙はまだそこにいた。
どうするのが一番楽か、近道か、しんどくないか、無難か、 なんていつもなら微塵も考えず、一瞬間で思った通りに走るのに、考えていること自体が一番自分らしくないと思った。じゃ 一体どうすれば良かったのか。深く考えるのはめんどくさい。どうせ笑えなくてあほくさくて頭に来てどうせ、大した答えも出ないし、そもそも分野じゃない。そういうのは、それ専門家に頼む、殴って相手が気絶すりゃハイ終わり、じゃどうしていけないのか、今でもそう思うすべてに言い訳している自分が、言いようもなく、くそダサいと思った。
右手だけ布団から出して、伸ばす。指で手紙をつかまえた。そのまま、引っ張る。
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手紙を握ったまま、千堂はそれから三十年歳を
とった ふたりの夢をみた。
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