ろしあへ.
試合のビデオを切ると繋ぎでドラマが流れて、それまでの良い気分がうって変わってどっ白けた。
教師と女子生徒の恋愛なんてゆう卦体糞が悪いドラマで、『禁断の愛と知らずに』のサブタイトルに思わず身震いした、というより噴いた。休養中にいくらやることがないと言っても、あんまりいつもと違うことをするもんじゃない。
女子生徒が家に帰って親父が女にポーズ撮らせてヌードの粘土つくってる。けったくそ悪さに拍車が掛かる。 しかし急に甘いものが食べたくなってきた。
『禁断の愛』なんて分からないしくだらないと思う。だいたい教師と生徒くらいじゃちっとも『禁断』なんて言えないんじゃないか?別に、
立場なんていくらでも、卒業すれば、変わるものなんだしと。
甘いもの甘いもの‥と視線を巡らす、
そして我に返る。
うちにそんなものあった試しがない。
瞼が半分落ちて、自然と不貞腐れた顔が出来上がった。視界のはずれに、金の紙で包まれた長方形の小さな板を見つける。その金色のなにかを穴開くほと見詰めて思い出した。
「あれ、チョコレートや‥」
白い牙とか狼だか呼ばれる拳骨を打つアマチュアだったら世界一強い男、実態はただのウスノロぼけえろロシア人、腕が強いから質の悪い、ただのロシア人。
包みの中で半分に割れてるのは、自分が苦し紛れにこないな甘いもんわいは好かんと部屋を出てくウスノロシア人に投げつけたからだ。 ウスノロシア人は笑って「アホ」と呟いた、そこで「アホ」はない、絶対あいつ何か間違えて覚えてた。
いつの間にかドラマはクライマックスに進んでいて、雨の中女子生徒が教師の家の前に来て叫ぶ、「会いたかったの 先生に」 さむ‥ 「会いたかったの」 アホ、 くさ、 なにこれ?というかいつのドラマだ、これ。
テレビを消す。
試合は偶然と偶然と偶然が重なり合ってできた必然で決まった。
それまでうちに泊まってたロシア人が急に引き取って行って、何かと思ったら試合だと言われた。
普通の出来事のはずなのに、いつもなら嬉しいはずなのに、しょうがないから割り切ってリングに上がれば、自分の知らないロシア人が目の前に立っていた。
つか、
誰や
こいつ‥こないな権太わいは知らんぞとかなんとかうだついているうちに自分の両目は風船みたいに腫れ上がった。 知らなくて当たり前だった、この餓鬼は自分をしばき倒しに来てるんだから‥ロシアの青い目をみたとき、
こいつは自分の知らない何か途轍もなくデカいのを背中にしょっていた。
打ち返せば打ち返すほど気が遠くなった。背中のなんかが大きすぎて目が眩んだ。今思えば、これが、『禁断の』アレ、だったのかも、
とか考える。自分らはどっちも男だったから、男だから捨てられなくて譲れなくて後に退けなくて後悔したりするのかも、とか。
くだらないが、一番正論な気がした。ただ子供ができないとかせっくすができないとか(いや実際楽しむだけなら有効だし)、そういうことじゃなく、男としての精神論が、
偶然と偶然と偶然と偶然と偶然により、自分があいつを、あいつが自分を、殴らせたのかもしれないな、 テレビの黒を眺めた。
試合内容はまったくうだつがあがらなかった。自分のうだつきがそのまんま出た結果だった。
自分との試合に負けたから、ロシア人はロシアに突っ返されることになった。
部屋にぐだついてたとき、ふたりで菓子たんまり外から買い込んだ、忘れられてひとつだけ余ったチョコレートを だから男同士だから、結局、駄目なんだ、 ひっぱってきて自分の試行錯誤に終止符を打とうと思う。
きっとこんなに感傷的になってるのは肋が何本か折れてんのと、ベルト持ってかれたから、腹空かしたロシア人から奪っといて、自分も盗られたから、
ロシアは思った以上に遠かったから、このチョコレートの在りかと理由が、自分の専門分野外の、
青天の霹靂だったからだ。
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