「・・・だからさあ、」


沢村はタオルで頭を拭きながら振り返る。なにか鼻歌してズボンを引き上げながら歩いてくる千堂に向かって言った。


「人がシャワー浴びてるときに便所はいんのやめろっつってんだろ」


突然の低い怒声に場の空気が ピリ、と音を立て、鼻歌が止まった。


「じゃガマンしろちゅーんか」

「お前の場合はしろ」

「なんやねんそれえ、差別や」

「あとズボンも最後までトイレではいてこい」

「うっさいのお、小姑かい」

「常識だろ」


バックルをようやくはめた千堂は沢村の一瞥をくらい舌打ちする。
そのままテレビの前まで歩いて行って、 コレまだ壊れとんのか と不満げに二三度こづいた。


「こうゆうのはな、叩くと直んねん」

「ジンクスだろそれ」


沢村もテレビの前にしゃがむ。一発ぶち込んでみるか、と本来の意味の
ジンクスを口走った千堂をすぐに制止する。


「お前また俺に借金つくる気か」

「前のはええてゆうたやんか」

「テレビも大破させたらこの際一緒に請求する」

「男に二言有り」

「お前ほどじゃねえよ」


元より壊れてんねん モノは試しや、と沢村の反応より早く千堂は息を
吸う。 沢村は一瞬で後ろに下がることしかできなかった。





「分かったてもう、次の休みは電気屋な」


叩いただけやのに、と呟いた千堂の声は、駄菓子屋の裏 車体が止まったエンジン音に掻き消された。


「あれは叩くじゃなくて殴るって言うんだよ」

「どっちもいっしょや」


どちらともないため息の後、千堂は真新しいバイクから降りて、沢村は乗ったまま、二度目のキスを続行した。

 こんなところばあちゃんに見つかりでもしたら自分は明日からどこで寝るんだ、と、千堂は頭の端で思ったが、いつもそれはすぐに頭から消えた。






























                        







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